精巣腫瘍

精巣(睾丸)のがんです。痛みがなく精巣が大きくなります。大きくなるまで気が付かない人もいますし、場所が場所だけに、言い出しにくく様子を見てしまう人もいるようです。実際に自分では気が付かなかったんだけど、奥さんに指摘されたなんて言う人もちらほらといます。
 精巣腫瘍は日本人男性10万人当たり1-2人と頻度は低いです。後発年齢は、1-2歳と20-40歳です。停留精巣の方は発生頻度が上がることが知られています。
このがんは化学療法がききます。ですので、転移があった場合でも、治癒できる可能性があります。自転車のランス・アームストロング選手は、肺転移・脳転移を克服し、自転車競技に復帰しました。(ツール5連覇は、ドーピングにて剥奪されました)
 早期発見に越したことはありませんので、左右の精巣の大きさが違う、最近大きくなってきた気がするなどの所見がある方は、泌尿器科受診をしてください。

尿管結石

 突然の背部痛や腰痛、しかも血尿がある。そういった症状があれば、尿管結石症の可能性が高いです。個人差はありますが、強烈な痛みであることが多いです。強い痛みではありますが、痛みに間欠性があるのも特徴です。激痛が来ますが、小一時間もすると自然に痛みが弱まることが多いです。
 疼痛時は、まずは痛みを鎮静することが第一です。腎機能に配慮し鎮痛薬を使用します。同時に結石の状態を評価します。結石の大きさ、尿管の閉塞具合、炎症所見の有無、腎機能などをチェックします。自排石が期待できそうな場合には、待機療法とします。疼痛コントロールを行いながら、尿管をゆるめる薬を内服し、自排石をうながします。自排石がむずかしい場合や、閉塞性腎盂腎炎を合併している場合などは、対応可能な病院を紹介します。

 当院では、排石した結石を確保できるように、茶こしのような器具を用意しています。これは結石成分がわかれば、今後の再発防止に役立つからです。尿路結石の再発率は高く、約半数程度が再発するといわれています。予防できるものであれば、それに越したことはないと考えています。多少面倒くさいと思われるかもしれませんが、上記理由ですので、できる範囲でご協力いただければ幸いです。

 

 

 

血尿

 いきなり赤いおしっこが出た場合、何らかの病気があります。痛みを伴う場合や、血尿以外は全く症状がない場合もあります。
 血尿の原因は、感染、結石、がんが3大原因です。特に症状がない場合はがんの可能性が高くなります。痛くもかゆくもないからと言って油断しないでください。
 病院に来て行う検査は、超音波検査、尿検査を行います。これで血尿の程度、大まかな原因のスクリーニングを行います。その上で、更に必要があれば膀胱鏡検査を行います。尿道から膀胱にかけての病変の有無が評価できます。両側の尿管口を観察することにより、左右どちらかの腎臓(上部尿路)に問題があるかを判断できることもあります。当院では、柔らかい軟性鏡というタイプの膀胱鏡を使い、痛みの軽減に努めています。

 いずれにせよ、肉眼的な血尿は必ず何か原因があります。重大な病気の可能性もありますので、まずは病院を受診することをお勧めします。
 
 

医薬品副作用被害救済制度とは

「医薬品副作用救済制度」長いですけど、皆さんは聞いたことがあるでしょうか。
 医薬品(病院、診療所で処方されたものの他に薬局で購入したものも含まれます。)を適正に使用したにもかかわらず、副作用によって一定レベル以上の健康被害が生じた場合に、医療費等の諸給付を行うものです。製薬会社の拠出金が財源です。

 副作用救済給付の対象となる健康被害は、昭和55年5月1日以降に医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による疾病(入院を必要とする程度のもの。)、障害(日常生活が著しく制限される程度の状態のもの。)及び死亡です。
 抗がん剤などは対象外で、用法容量が不適切な場合は認められないこともあるようです。

 厚労省によると、2007年~11年度に医薬品を服用した患者が副作用による健康被害を国に訴え、国が救済するかどうかを判定した件数は計4880件。うち、14%にあたる663件で救済が認められなかった。救済を認めなかった理由として、「医薬品が原因とは認められない」が45%とトップ。次いで「使用の目的や方法が適正とは認められない」が23%を占めた。3番目に多かったのは「健康被害が軽度」で19%だったそうです。

 この制度自体の認知がまだまだ高くないのが原因ですが、もっと利用者が多くてもいいような気がします。重篤な副作用が起きないよう、十分注意して診療を行っていますが、ある程度の頻度で副作用はおきます。市販の風邪薬や、一般的な抗生剤でも重篤な副作用は、頻度は少ないながら起こりえます。お金だけの問題では、もちろんないのですが、こういった救済制度があることは知っておいたほうがよいでしょう。

http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai/help.html

尿道炎

 性的行為ののち、尿道がかゆい、痛みがある、膿がでるなどの症状が出た場合、ほぼ間違いなく尿道炎を発症しています。原因菌としては、淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマなどがあります。大部分は淋菌、クラミジアで、それぞれ症状、使用抗生剤が異なります。

 尿道炎になったらどうするか、一番大事なことは、悩んでないでとりあえず病院を受診してください。治療の細かい話は本日はしませんが、今は抗生剤の内服や点滴の単会投与で治る場合が多いです(症状により内服を継続していただく場合もあります)。また、何よりも、感染している場合、あなたが新たな感染源になっています。治療を優先してください。しっかり治すことが大事です。今の時代、思わぬ機会に感染してしまうことも少なくないでしょう。恥ずかしがらずに相談してください。

 ご希望があれば、ブライダルチェックなども受け付けております。

 

 

論文紹介シリーズ①  抗がん剤治療で「がん」は治らないんだけど、患者さんはそのことを知っているのかな?

論文紹介シリーズ1(表題はかなりの意訳です。正しくは本文を参照してください)
皆さんに是非知っておいていただきたいお話を紹介していきます。

 進行がんは化学療法では治る可能性は低いです。がん診療に従事している医師は十分認識していますが、患者さんにどの程度説明しているかは医師により異なります。(白血病や精巣がんなど、抗がん剤治療で根治が期待できるがんもあります)
 私は、なるべく長くなるよう努力するが残された時間は有限であることを説明していました。本人が残された時間を、後悔なくすごすためには病状を理解していただくことが最重要であると考えているからです。もちろん緩和科や臨床心理療法士さんのfollowも重要となります。
 これは、非常につらい仕事であります。希望(根治への期待)を持ってがんセンターに来院された患者さんに、その希望を絶つようなお話をするわけですので、当然話している方も、断腸の思いです。赴任当初、つらい仕事だなと感じたことを覚えています。
 ただ現実的には、患者さんに抗がん剤治療で治るかもという誤った期待を抱かせたまま、抗がん剤治療が継続されている例も多々あると思います。

最近のニューイングランドジャーナルという医学雑誌に載った論文を紹介します。
「進行癌に対する化学療法の効果に関する患者の期待」
Patients’ Expectations about Effects of Chemotherapy for Advanced Cancer
J.C. Weeks and others(N Engl J Med 2012; 367 : 1616 – 25.)
(背景)
「 転移性の肺癌または大腸癌は,化学療法によって生存期間が数週間から数ヵ月延長し,症状が緩和される可能性があるが,治癒は得られない.」という背景をもとに調査が進められました。
(対象)
IV 期(転移があり根治は困難な状態)の肺癌または大腸癌に対して化学療法を受けた人が対象になっています。
調査の目的は、化学療法によって治癒する可能性があるという期待をもつ患者の割合を明らかにすること。また、この期待に関連する臨床的因子,社会人口学的因子,医療制度的因子を同定することです。
(結果)
全体で,肺癌患者の 69%と大腸癌患者の 81%が,化学療法によって癌が治癒する可能性はまったくないことを理解していなかった。
(結論)
不治の癌に対して化学療法を受けている患者の多くは,化学療法によって治癒する可能性は低いことを理解していない可能性がある。そのため,十分な情報に基づいて,自身の意向に沿った治療を決定する能力に欠けているおそれがある.
 
わかりやすいように、要約を意訳しました。論文本文では、医師患者関係や、肺がん患者と、大腸がん患者の理解度の違いなども言及されています。
 アメリカでもやはりこういった問題があるのだなということが分かり勉強になりました。Ⅳ期大腸がんで抗がん剤治療を受けている患者さんのうち、自分が治らないということを2割程度しか知らないということに驚きました。きっと日本では、もっと低いのだろうと思います。
 ただ、こういった話が一流雑誌に掲載される状況には感嘆します。アメリカ医学界のふところの深さを感じました。

腹圧性尿失禁症、骨盤臓器脱の方へ

現在、名鉄病院より月に一度、寺本先生をお呼びして、専門外来をお願いしております。女性の先生です。以前は亀田総合病院のウロギネコロジーセンターに勤務されており、この領域では非常に経験豊富な先生です。
 ウロギネコロジーとは泌尿器科(Urology)と婦人科(Gynecology )の合わさった言葉です。泌尿器科と産婦人科の境界領域にある病気を対応します。具体的には、腹圧性尿失禁症や骨盤臓器脱などの治療を行います。

普段、当院を受診している患者さんで、腹圧性尿失禁症、骨盤臓器脱などがある患者さんを中心に診察をお願いしています。状態に応じて、運動療法、薬物治療、手術などの治療法を提示いたします。

腹圧性尿失禁や、骨盤臓器脱などで、お困りの方、ご相談ください。

減量について

高齢者向けの減量プログラムを研究しています。現在臨床試験中です。被験者1名、自分の体を使って実験中です。

この1年ほどで、約10kgやせました。開業疲れという噂もありますが、決してそんなことはないです。

印象として、代謝が下がり同じ食事をしても自然に太っていくという時期が、40代、60代にあるような気がします。(私も40代なって太りました。)太りやすい時期に、現状を維持するだけでも十分に意味があるかと思います。せいぜい月1㎏程度の減量が、高齢者には優しいかなと思い、減量プログラムを考えています。

とは申しましても、現在被験者1名(自分)ですので、もう少し症例数を重ねてご報告したいと思います。万が一興味がある方がいらっしゃいましたら、是非、声をかけてください。

 

 

PSA高値と言われたら②

実際に検診でPSA高値といわれたら、具体的にどうすればいいかお話します。

まず、泌尿器科を受診することをお勧めします。そして、診察をうけてください。尿検査、超音波検査、直腸診を行い、前立腺の状態を評価します。尿路感染症や前立腺肥大症もPSA値に影響を与えますので、その状態を評価します。検査結果を総合的に判断した上で、ご本人の意向を加味し治療方針を決定します。

診察の結果とるべき方針は以下になります。

① 針生検(直接前立腺の組織を採取する)をおこない、がんがあるか調べる。

② 経過観察 (定期的にPSA、超音波検査をおこなう)

ゆっくりお話しできると思いますので、お気軽にご相談を。

 

過活動膀胱

だいぶ寒くなってきました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

昨日は、スズケン沼津支店で排尿困難について講演を行いました。

主に過活動膀胱について話しました。過活動膀胱とは尿意切迫感を主症状する症候群で、主に頻尿を伴います。男女ともにみられます。最近トイレを我慢することが辛くなってきたら、過活動膀胱の可能性があります。国内の40歳以上の人口の12.4%、約810万人が過活動膀胱の症状を有していると推定されています。

原因は、尿がたまったという情報を脳に伝える神経系が過敏に反応することが考えられていますが、どうしてそのようなことが起こるのかは不明な点が多いです。加齢、前立腺肥大症、神経疾患、骨盤底筋のゆるみなどなどが、神経系に影響を与えていると考えられています。

治療は、薬物療法が中心です。膀胱の筋肉を弛緩させ、膀胱容量が増えるお薬を使い症状の緩和をはかります。症状に応じて、膀胱訓練、骨盤底筋群体操、EMS(干渉低周波治療)などを組み合わせて治療を行う場合もあります。