PSA高値と言われたら①

PSA(Postate Specific Antifen)は、前立腺特異抗原のことです。前立腺組織で作っているタンパク質です。前立腺がん組織で特別大量に作っているわけではありません。ただ、前立腺がん組織があると、血液中に漏れ出ることが多いようで、血中PSA濃度が高くなります。

現在のところ、血中PSA濃度が4以上であれば、精査を進められることが一般的です。PSA高値の場合、白黒つけるためには前立腺針生検必要です。直腸、あるいは会陰から針を刺し直接前立腺組織を採取します。病院に入院して検査を行うことが多いです。

歴史的に泌尿器科ではPSA4以上の患者に対して、積極的に前立腺生検をすすめてきました。しかし、これは個人的な意見となりますが、PSA4以上の患者にすべからく前立腺生検を進めることには疑問を感じています。静岡がんセンター在職中より、前立腺がんが強く疑われる患者さんには積極的に前立腺生検をおすすめしていましたが、年齢や前立腺の所見によっては経過観察をお勧めすることも多かったです。(その場合、PSAの定期的な経過観察をします。)

当院に来院された方は前立腺、全身状態を評価し、ご本人の意向をふまえた対策法を提示いたします。PSA高値と言われた方はお気軽にご相談ください。

(追記)                                                             PSA検診そのものの効果に対して、現在、医師の間で議論がおこっています。以下に日本国内の代表的な賛成意見、反対意見をのせておきます。ご興味のある方はのぞいてみてください。

 

夜尿症の治療

夜尿症に関しては、8歳ぐらいからを治療対象としていますが、発達過程で治癒する可能性も高いです。

当院では、夜尿アラーム療法を第一選択としています。この治療が無効である場合、抗利尿ホルモン投与を第2選択としています。抗コリン剤、三環系抗うつ剤も使用しますが、長期にわたる使用は控えています。また、EMS(電気的筋肉刺激、Electrical Muscle Stimulation)も、行う場合があります。この治療は、まだ論文数も少なく、実験的なところもありますが、膀胱容量を大きくし夜尿を改善する可能性があります。副作用がほとんどないことも利点です。

以上の治療を組み合わせ治療していますが、基本的には、なるべく薬物に頼らずに改善することを目指しています。お困りの方はお気軽にご相談ください。下記に日本夜尿症学会のガイドラインのHPをリンクしておきますので、参考にしてください。

日本夜尿症学会ガイドライン   http://www.jsen.jp/guideline/

風邪薬(総合感冒薬)のリスク→排尿できなくなりますよ

だいぶ寒くなりました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。そろそろ風邪がはやり始める季節になりました。前立腺肥大症と言われている方や、尿の勢いが悪い男性には是非注意していただきたいことがあります。それは安易に総合感冒薬を飲まないこと。内科などで処方していただく際は、排尿困難があることを医師に伝えることです。

それは、何故でしょうか。実は総合感冒薬を飲むと、尿の勢いが悪くなることがあります。最悪の場合は尿が全くでなくなります(医学的には尿閉といいます)。当院でもすでに他院で処方された感冒薬内服後に尿閉となった患者さんが来院されました。これは本当に苦しいです。

少し専門的になりますが、理由について解説します。鼻水を抑える作用のある抗ヒスタミン薬、去痰作用のあるエフェドリンが、排尿に悪影響を与えます。

  • 抗ヒスタミン薬は、アセチルコリン受容体にも結合してしまい、抗コリン作用を呈します。これは排尿筋を弛緩させ尿を出にくくします。
  • エフェドリンは交感神経を刺戟します。気管支では拡張作用があり、去痰作用を呈しますが、前立腺部では平滑筋を収縮させ、尿道を狭くします。

以上のような理由で、排尿困難になります。 いずれにせよ、総合感冒薬を飲むと尿の出が悪くなることがあるということは、頭の片隅に入れておいてよいと思います。

外来では、口をすっぱくしてお話しているのですが、意外と知らない人も多いようですので、参考にしてください。

 

膀胱炎について

病気について、少しずつ書き足していきたいと思います。今回は膀胱炎についてです。

トイレが近くなって、排尿後痛みがある。排尿してもすっきりしないで残った感じがある、血が混じっている。こんな症状がありましたら、膀胱炎の可能性が極めて高いです。

原因は、細菌が膀胱内に入り込むことで、膀胱粘膜が炎症を起こすことによります。女性の方に起こることが多く、起炎菌は大腸菌が8割以上を占めます。

診断は、臨床症状と尿所見で行います。

治療は、抗生剤投与です。数日の内服で症状は改善します。

症状が改善したことを確認し治療を終了しています。

再発を繰り返すことが多いことも膀胱炎治療の特徴の一つです。短期間で再発を繰り返す人には原因検索を行います。原因がわからない場合は、生活習慣のチェック、早期抗生剤内服などの対応をしています。

(補足)                                                     当院では開院以来、可能な限り尿培養検査を行い、原因菌の特定に努めてきました。その結果を解析して、第一選択の抗生剤を決定しています。                                海外ではST合剤が標準的に使われていますが、当院では積極的な使用をしていません。理由は、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には使用禁止であるからです。当院に来られる 患者さんは、妊娠可能年齢の方も多いです。問診である程度のリスクは回避できますが、他に安全な薬剤もあるので、敢えて使用する必要もないかと考えています。(培養検査の結果などで必要あれば、もちろん使用します)